しゅーちゃんに彼女がいた。

しかも…妊娠している婚約者が。








桐谷慎が教えてくれた事実はしゅーちゃんに対する私の信頼を粉々に打ち砕いた。





あの時だってそう。

“伊織だけだよ”って言ったクセにしゅーちゃんは浮気した。







婚約者がいるならどうして私を放っておいてくれなかったの??



なんで“好きだ”なんて言うの?






しゅーちゃんがそっとしておいてくれてたらこんなに苦しい気持ちを味あわなくて済んだのに。






桐谷慎に寄り添われて廊下を歩いていても、次から次へと溢れる涙。






「その顔じゃ…戻るのは無理だね。」






桐谷慎がポソっと呟いて。
ぐいっと反対方向に腕を引っ張ったのは、そのすぐ後のこと。







「な…何を…っ?!」

「いーから。このまま帰ろう。」

「はいっ!?」






何言ってんのよ、この人~??!!!

まだ定時まで5時間近くあるんだよ!?

急に早退なんてできるワケないじゃん!!!







「無理です!!」

「なんで。」

「仕事も残ってるしバッグもオフィスに置きっぱなしだし…。」





帰れるワケないじゃん。







そう訴えたのに。






「あ~、大丈夫。上にはちゃんと理由を言ってあげるよ。
それに…荷物は後から俺が高宮の部屋に持ってけばいーでしょ?」







そう言って。

桐谷慎はニッコリと天使のように微笑んだ。