な、なぜ泣く?!







大粒の涙をこぼしながら泣きじゃくる、伊織。








い、意味がわからない……。








ボーゼンとしながらアイツのいる方を向いて見つめていると。







「やっぱり…無理だよぅ…っ。…うっ…。」


「はぁ?」






伊織はわけのわかんないことを口走りはじめた。






「そんな風に拒絶されたら、私じゃダメなんだな…って思い知っちゃう…っ。」


「はいっ!?」






ちょっと待て、ちょっと待て!!

何が起こってる!?

何、言ってんの、コイツ!!






状況がうまく飲み込めずにポカーンと伊織を見つめていると。








「センパイが理央のこと好きなのわかってる。」


「はいっ!?」




な…何言ってんだー?!コイツ!!!!!!!



俺が一ノ瀬理央を好き??

アホか!!!!!!!!!

天と地がひっくり返ってもありえねぇ!!!!!!!!!!!







「あのなぁ!!!!!」



と、ツッコミを入れようとしたとき。

伊織は俺の右手をギュッと握ってこう言った。






「だけど…、諦めきれない。私、秀人センパイのこと好きなの。
あの…、夏の日から。」








い…おり…??








「こんな気持ちセンパイには迷惑にしかならないの知ってる。
だから…私をフって??
叶わない片想いから卒業させて下さい…っ。」









俺の手を掴む伊織の手がフルフルと震えてる。

アイツの目からポタポタとこぼれる涙がいとおしくて。

小さく震える華奢な体がいとおしくて。







「お前…ホントにバカ…。」








気がつくと。

俺は伊織の手をひきよせて。


アイツのピンク色に光る唇にキスをした。