お茶を濁すように曖昧に答えると



「無理しなくてもいいですよ?私…一人でも平気だし、先輩の負担になるようなことしたくないし……。」




ギュッ。

アイツの制服の裾を掴む力が更に強くなる。







ドクン。






ヤベェ。

なんか心臓がドクドクする。

落ち着かない。

なのにコイツを可愛いと、いじらしいと思ってる。






なんだよ、この気持ち。







「先輩の負担になってるなら…」




伊織が次の言葉を繋ごうとしたとき。







「バーカ。迷惑なワケねーだろ??」







俺の口から出たのは自分でも意外な言葉。







「迷惑だったら断ってる。」

「えっ…??」

「俺が勝手にやってんだ。高宮さんが気にすることじゃないよ。」









そう…だ。
一ノ瀬に言われたからじゃない。
アイツに何かしてやりたいと思っての行動だ。







伊織に話しながら。

俺は自分の気持ちに改めて気づく。








「俺、高宮さんを守ってやりたいんだ。
あんな涙は…もう見たくないから。」









面倒なチャリ通を続けてるのも、命令されたからじゃない。



コイツが…特別だから…なのかも。









「ありがとう、先輩。」








背中に響く伊織の声と、背中に感じるアイツのぬくもり。






誰にも渡したくない。
俺だけのモノでいてほしい。








一ノ瀬の策略によって…、俺は自分の恋心に気づかされた。









藤堂秀人、高校2年の夏。





高宮伊織に…恋をした。