「藤堂センパイ……っ」






伊織は水着のまんま。

キャップを外した濡れた髪をおろしたまんま。

ぐちゃぐちゃの顔をして泣いていて。







「ど、どうしたの?!そんなカッコのまんま!!!!!」







なんて。
冷静なコト言ってたけど、下半身はヤバいコトになっていて。


俺は顔を真っ赤にしながらアイツの姿から目を背けた。












反則だろ~!!!!

水着に濡れた髪に潤んだ瞳は~っ!!!!!










頭の中はイケナイ妄想でいっぱいで。

そんな妄想を打ち消すのに必死。








ヤベー…。
この姿オカズにしちまいそう(涙)









なんて、自己嫌悪に陥ってると。









「…いの。」

「えっ!!?」







蚊の泣くような声で何かを呟く。







「荷物が…何にもないの。」






…えっ!!!?






それを聞いた瞬間。






グルッと辺りを見回すと…。

タオルはおろか、アイツがいつも持ってるカバンすら部屋のどこにも見当たらない。








「ケータイもなくて…。誰にも助けも呼べなくて……っ……。」






そう言って。

伊織はまた泣き出してしまった。

子供みたいに丸まって泣いてる伊織を見てるといたたまれない気持ちになって…。







気がつくと。

俺は自分のバスタオルをカバンの中から取り出して、伊織に向かって放り投げてた。








「俺が探してくるから!!」









伊織を助けてやりたい。


心からそう思った。









「俺のじゃイヤかもしんないけど…。ないよりはマシだから被ってて!!」








そう言って。
俺は更衣室を後にした。