銀色の扉をギイッと開けて。

スニーカーのままプールサイドを目指す。






ウチの学校の更衣室は、飛び込み台の真後ろ。






もちろん男子更衣室は明かりは消えてんだけど…、女子更衣室の明かりは灯ったまんまだ。







結構…泳いでいたんだな~。







なんて呑気に考えながら飛び込み台に腰かけて、伊織が出てくるのを待つ。





だけど…。
10分しても15分しても伊織が出てくる気配は全くない。

しかも物音すらしない。







もう…帰っちゃったのかな…。










きっと、ボンヤリな伊織のこと。
泳ぐだけ泳いで、明かりを消して帰るの忘れたんだな…。







あ~、バカみてぇ、俺。









ハァ~、とため息をついて重い腰を上げて。


パンパンとケツを払う。








顧問にどやされんのもヤだから、電気消してかえろ…。








「おじゃましますよ~」








小さな声で一応断りをいれて。

電気を消そうと一歩踏み込んだ瞬間。







「…っく。ヒック…。」




「えっ!!高宮さん!!!??」









部屋の隅で。
体育座りのまま、水着姿のまま。


丸まって泣いてる伊織を見つけたんだ…。