呆然としながら歩いていると。




「伊織!!」






後ろからしゅーちゃんの声が聞こえる。







「行こう、高宮。
聞いてもお前がツラくなるだけだ。」







…コクン。




小さく頷いて。
後ろは振り返らずに前を見つめて歩く。





振り返らない。

振り返っても傷つくだけ。

もう…傷つきたくない。








自分の犯した罪なんてそっちのけで。





ただ自分が傷つきたくない。






それだけの理由でしゅーちゃんの声を遮るように。
振り返らないように歩く。





なのに…。







「明後日。
空港で待ってるから!!!
俺…ずっと待ってるから!!!!!」








しゅーちゃんが叫ぶ。

俺たちはこれで終わりじゃないと主張するかのように。







だけど…耳元で悪魔が囁く。







「行くな、高宮。
藤堂の婚約者は妊娠してる。」






………と。