翌朝。
桐谷慎の部屋のアラームで目覚めた私は、スルリとアイツの腕からすり抜けた。
「ん~…。」
桐谷慎はまだ夢の中。
私は時計のアラームを止めると10分後にまた鳴るように時計をセッティングした。
ベッドに座って。
無防備に眠る桐谷慎の横顔を見つめる。
桐谷慎は気持ちよさそうに規則的な寝息をたてて眠ってる。
ねつ…下がったのかな。
心配になって額に手を当てる。
触った感じだけじゃわからないけど…、昨日の焼けるような熱さはもうない。
まだ少し熱い気もするけど、熱は大分下がったみたいだ。
「…よかった。」
桐谷慎の少し茶色い、長い髪を撫でるように指先に絡める。
昨日まで…、いや、一昨日までは大嫌いで、天敵だという認識だった桐谷慎。
なのに……1日夜が明けただけで、天敵だったアイツは変わった。
しゅーちゃんとは違う。
だけど同じ位置にアイツは忍び込んで、私の気持ちを掠め取ろうとしてる。
「ばーーか。」
はっきり言いますけどね。
アンタみたいな俺様エロ魔神、絶対オコトワリ。
悪いけどアンタの顔も性格もまったくもって好みじゃない。
だけど。
…だけどね。
認めるよ。
私はアンタに惹かれてる。
どうしようもなく惹かれてる。
桐谷慎のキスを拒否できないのも
セクハラを許しちゃうのも
アンタのキスを気持ちいいと思ってしまうのも
…私が桐谷慎を好きだから。
アンタに溺れたいと望んでいたから。