「ほら、エロ発言はもういいから。
早く寝て下さい、私ももう帰りますから。」







危ない。
この場にずっといると私が大事にしてたすべてを失いそうで怖い。




ここにいちゃいけない。

引き返したいならここにいちゃいけない。



そう…
私の中の女の本能が告げている。






なのに。





ギュウ…っ。







「…側に…いてよ。」







桐谷慎は私の耳元で囁く。
それは甘い悪魔のささやきにも似て、私の心を揺さぶって。
かき乱して離さない。






「お願い。俺が眠るまででいい。
側にいて……、伊織。」






悪魔のささやきと共に私を強く強くだきしめる…悪魔なアイツ。






桐谷慎は懇願するように私の体をだきしめる。










イヤだ…って。
イヤだ…って言うのよ、伊織。

あなたにはしゅーちゃんって大切な人がいるんでしょ?

ダメ。
この手は離すの。




…後悔になる前に。








私の理性はそう叫んでる。
今は危険だと。



だけど…、私の本能は。










「…何にもしない?」

「うん。」

「しゅーちゃんに言わない??」

「あのね~。
言ってこれ以上、敵を増やしてどうすんの。」

「ほんとに…なんにもしない??」

「体力ない…って言ったろ??
今はSEXは無理。」




桐谷慎は私の頭をいとおしそうにナデナデする。






「約束するよ。エッチなコトは絶対しない…って。
だから…側にいて。」








理性はダメだと告げている。
だけど私の本能は…





「じゃあ…ホントに寝るまでだからね。」








天敵で

悪魔で

エロ魔神で

セクハラ上司のフェロモン男の。





ムカつく男、桐谷慎の側にいたいと告げていたんだ……。