トクン

トクン



桐谷慎の胸から聞こえる静かな鼓動。

私はアイツに抱きしめられたまま動けない。





いや…動けない…じゃないのかもしれない。




変。
私…なんか変だ。








しゅーちゃんに抱きしめられると心がザワザワして落ち着かなくて。
ドキドキしすぎてなにが何だかわからなくなっちゃうのに…。







桐谷慎に抱きしめられるとホッとする。
触れた肌から感じる体温が心地いい。






なんで??
こんなヤツ天敵以外の何者でもないのに。

どうしてこんな気持ちになっちゃうんだろう。









桐谷慎に抱きしめられたまま。
アイツの胸に耳を当てて鼓動を聞きながら。

私はこの不思議な感覚の答えを見いだせずにいる。




その答えを見つけようと悶々としていると。




「あ~。高宮、抱き心地最高~。」



桐谷慎は悪魔でのん気。

私の頭のてっぺんにキスしたり、ギューっと体が1つにくっついちゃうくらい強く抱きしめたり。

(基本…この人自由なんだよね…。)





私をオモチャに散々ソフトセクハラを堪能した挙げ句。







「高宮のカラダは…まるで俺用にあつらえたみたいだな。」


「はい??」





出たよ、エロ魔神。

いつものコトかと思ってほっておくと。







「高宮を抱きしめてると他人を抱いてる違和感がないんだ。
だから…落ち着く。」




桐谷慎は。


こんなワケわかんない…

いや。

限りなく私の求めている答えに近い言葉を言おうとしていたのかもしれない。





だけど…

臆病な私はその答えを聞くのが怖かったんだ…。