よほど大音量で聞いているのか桐谷慎は私の存在に気づいてはいない。





こんな遅くまで…。






桐谷慎がここまで残業してる理由はただ1つ。

例の水着の案件だろう。






パソコンとにらめっこをしながらノートに何やら書き込んでいる。




きっと…考えてるんだ。
売り込み方を。




ま…、何書いてるのかはわかんないけど…なんとなく邪魔しちゃいけないような気がして。




自分のデスクから携帯を取って、そーっと出て行こうとした時。








「高宮…?」






げっ!!!!!
見つかっちゃった~(涙)






イヤフォンを外しながら。
信じられないという表情で私を見つめる桐谷慎。






「ご、ごめんなさい。邪魔するつもりはなかったんです。
すぐ帰りますから。」







桐谷慎が私を見つめる目がいつになく熱っぽい感じがして。

落ち着かなくてそそくさとこの場から逃げようとすると。







「いいけど…、給湯室の前は気をつけろよ?」




はい??
給湯室??




桐谷慎は訳のわからない一言をいい放つ。

ワケがわからなさすぎてポカンとしてると桐谷慎はニヤッと笑って





「昔、不倫がバレて自殺した若い女のユーレイが出るって噂だから。」







怖がりな私に悪魔な一言をプレゼントしやがった。