笹田(ササダ)、と後ろから自分の名前を呼ぶ声がした。

金髪を逆立てて、両耳で合計10のピアス、それからぐちゃぐちゃと原形を留めないほど着崩した制服の自分に声をかけるヤツといったら、同じ生徒会のメンバーか教師くらい。
生徒会のメンバーは自分のことを「彰(アキラ)」と呼ぶから、きっと教師だろう。

そう頭の中で考えてからゆっくりと振り向く。


「何か用か」


無愛想につぶやけば、相手はびくりと肩を震わせた。


「あ、いや、笹田に頼みがあってな」

「俺に?」


怯える相手に睨みをきかせると、相手は急いで話を済まそうと言葉を走らせた。


「仲茅(ナカガヤ)先生からの伝言なんだが、この地図の場所に行って、自分に電話をしろ、と」


いきなり意味のわからないことを言われて、思わず「はぁ?」と言ってしまった。(こういうことをするから俺の好感度は落ちていくんだよ)

まぁそんなことはどうでもいい。
何で俺が、と言おうとしたところで、教師は「それじゃ!」と足早に立ち去ってしまった。

差し出された地図を見ると、ある地点に赤く印がついている。
自分の家の近く、それにこの場所なら分かる。


まぁどうせ暇だし、帰ったら仲茅になんか奢らせよう。


そう考えながら、地図と携帯だけを持って下駄箱へと向かった。



放課後になって2時間ほどしたころだったからか、下駄箱には人影はなかった。
外からは運動部の掛け声や吹奏楽部の管楽器の音が聞こえる。それらをBGMに靴を履き換えた。

目的地までは徒歩で約10分。
何だか一人の自分がむなしい気がして、今流行りのJPOPを聞きながら校門をくぐった。





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