「まあ、施しを受ける身だし、礼儀くらいはね。ほら、世話になる身で図々しい奴とかウザいだけじゃないですか?」

本当はただ、感動していただけなんだと、誰が言えよう。
まあ、こんな事を言う俺自身が実際はそういう図々しいタイプの人間なんだが。
さすがに命の恩人(?)にまで無礼を通すほどではない。

「まあ、そうでしたか……でも、そういう気が強い方って、子供っぽくて好きですよ私は♪」

………。
世の中、礼儀正しい人間が損をするものなんだなと、たった今思い知らされた。
図々しく子供っぽい方が、女性の母性本能をくすぐるのだろう。

って、待て待て待て!
なんで、モテるかモテないかでこんな真剣に悩み苦しんでるんだ俺は?
こんな初対面の女の価値観気にしてどうするよ、俺。
そうだ、いつもの自分らしく、堂々としていよう。

「あ、もう食べてもいいですよ」

っと、思索に耽っている間に当初の目的をまたも忘れてしまうところだった。
その間にスープも若干冷めてしまっていたようだ。
勿体ない事をするところだった。

いや、若干といえど、冷めてしまったのは変わり無いんだし、勿体ない事に違いは無い。