お父様は、そんな私の返事を聞いてから頷いた。



「婚礼の日取りは一ヶ月後だ。明日にはデュナミスを発ち、ルナティア城へと向かう。…準備は良いな、ソフィーリア」


なんだか私を慰めるような穏やかな優しい声音で、お父様から語りかけるようにそう問われた。


きっと、お父様なりに私を心配してくださっているのだろう。

今も昔も、優しい方だから。




明日にデュナミスを発つならば、今日の夜しか自由に行動できる日は無いという事だ。

『自由に』とは言っても、恐らく部屋から出してもらえはしないだろう。

万が一結婚の前に私がいなくなったら、両国にとって一大事だもの。




そんな事を考えながらも、お父様への答えは既に一つと決まっていた。


「もちろんです」


今度は強い意思を込めた瞳でお父様を見返し、小さく頷いてから微笑む。





…もちろん異存は無いわ。

心の準備だって万全。



だって私は、今までこのためだけに生きてきたのだから――…