「叫んだって無駄だぜ?ここにゃお前を助けてくれる奴なんか来やしないからよォ…」


追い討ちをかけるように、髭面の男が気味の悪い笑みをこぼす。



やはり…後ろ向きな事ばかり考えていたから、神様に天罰を与えられたのだろうか。


もっと前向きな性格だったなら、こんな事態にはならなかったかもしれない。


今となっては後の祭りだけど…


せめて、馬車に乗っていた他の者達だけは生かしておいて欲しかった。




全部私のせいなのだから。


他の人が犠牲になる意味なんてないのに…!!





「そんじゃあ…楽しませてもらうからなァ?」



大人しくなった私を見下ろした男は、ゆっくりと胸の膨らみに触れようと手を伸ばす…




その時だった。











「うわ…ぎゃああぁッッ」

「誰だ貴様!」

「た、助けてくれ…ぅぐッ」



辺りから、賊の助けを請うような叫び声が響き始めたのだ。


だけど、押し倒されている今の体勢では状況を音以外では確認できない。


私の上に跨がっている男ですら手を止めて、まるで金縛りにあったかのように一点を見開いた目で見詰めている。


一体…何が起こっているの?

状況が全く分からない私は、さっきとは異なる喧騒に戸惑うばかりだった。




髭面の男は私の上から退き、驚愕の色を湛えた眼差しで騒ぎの方向を見据えている。

「な、お前は…!!」


どうやら髭面の男は、騒ぎを起こした何者かに見覚えがあるようだ。


その眼差しが、驚愕から畏怖へと変わっていくのが見える。






私は自由になった肢体を起こし、男が見ている方向に目を遣った。