【長】黎明に輝く女王

 長い回廊を歩きながら、これから先のことをいろいろ考える。
 式自体はそんなに長くはない。
 場所だって慣れたもの。高い天井に、色とりどりのガラス、大理石の大きな柱。どれも普段から目にしている場所だけど、なぜか今日だけはその場所が神々しく思えた。

 周囲で控えている人たちの表情も、どこかいつもと違う。顔がこわばっている者もいれば、笑みを浮かべている人もいる。
 だけど、そのどれもがやはり普段と違うように思うのだ。


 ゆっくりと玉座の方まで歩き、そして振り返って向きを変える。
 少し段の高いその場所からは、さまざまなことが目に飛び込んできた。だけど、はっきりとは入ってこず、その雰囲気だけがあたしの体に入っていった。


 ああ、いよいよかぁ。


 長々とした言葉の後、一際大きく強い声に名を呼ばれる。“セリナ・シェルヴェン”と。
 その言葉に合わせて、父である皇王の方を向き、ひざをつき、頭を下げる。

 とてもゆっくりとした、長い時間だった。

「皇女セリナ、今日この日をもって、そなたを神預国<シロラーナ>の皇太子に据える」

 頭はさげたまま、目線だけ上げて、周りをみる。厳かな中にも、喜びがあふれているのがとても伝わってきた。

「王名として“フルラージュ”を授ける。これより先はセリナ=フルラージュ・シェルヴェン、シロラーナ初の女性継承者として、常に国のために女神のために、その身を捧げよ」

 そして、銀の小さな冠を頂いた。皇太子の象徴たる冠を。
 それを受け継いだことにより、あたしの地位は確かなものとなった。嬉しいだけじゃない。厳しいことだって多い。

 これは責任も一緒に頂くということに他ならないのだから。

 でも、それはあたしが認められたという事実であり、不安もあったが喜びも強かった。


 頭を上げたその瞬間、起こる歓声に拍手。父と比べるとまだまだの量である。
 だけど、あたしにとってそれは一人でも祝福してくれるものがいるという事実。

 喜んでくれている者もいれば、もしかしたら古参の貴族たちは心の中で不満がある者もいるかもしれない。いや、興味関心がないという者だっているだろう。


 それでも。1年前と比べて、少しずつ増えてきた祝福。まだまだ先があるのだから、全部なんて望まない。
 それに、あたし自身が活動したことだって少ない。これから、ちょっとずつ、ちょっとずつ安心してもらえるような者になっていけばいいのだから。


 時代は変わる。いや、変えていく。

 これからの時代はあたしたちの手に全てがかかっている。


 そう継承式は誓い。これからの自分に向けて誓う。すべてのものに向けて、これからの自分の在り方を示すものだ。

 今日、この日を忘れてはならない。
 胸に強く刻んだ想いは、未来へのあたしの糧となるだろう。