「ごめんなさい
 ごめんなさい、イオリ
 あなたを、憎むことが
 できたら、どんなに・・・」

庵は巴を、その腕に抱きしめる

「もう、謝るな」

巴の背に触れる左手、薬指には
指輪が輝く。

その指輪に触れる右手、庵は
巴から離れた。

「トモエ、やっぱり
 ここにいたのか?
 勝手に家を抜け出して
 困った奴だ
 絵の具は買えたのか?
 ・・・・・・イオリ」

行き先を伝えずに外出した巴を
心配して彼女の行きそうな場所
を探して、ここに辿り着いた
新の姿が、そこに合った。 

庵の姿に、驚きを隠せない新。

「仮釈放された事は知っていた
 が、こんな場所で、お前に
 会うとは・・・
 仕事の帰りか?」

作業着姿の庵を見つめる、新。

「ああ、息子に頼まれた物を
 買いに来たんだが
 こんな汚れた格好
 ・・・出直すよ」