バイト上がりまでの残りの時間、私の頭は意外にも冷静に物事を考えられるようになった。

名刺はとりあえず制服の胸ポケットにしまった。
他のお客のじゃまになるから。


――さっきの彼と話をする必要なんてない。

再び会ったところでなにを話せばいいのだろう。

「両親はどこにいるの?」
「あなたは何者?」

………いらない。
聞く必要なんて、ない。

私は、さっきの名刺を制服のポケットに入れっぱなしにして店を後にした。



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