ただ彼の顔を見つめるしかできない私に、彼は名刺を渡してきた。

『株式会社フォルクス
 真山 恭平』

「とりあえず…今日は何時に終わるんだ?終わったら、メシでも食べながら話そうや」

終わったら名刺に乗っている番号に電話するよう言い残し、颯爽と店から出ていった。

カウンターの上に残った名刺。

今すぐ風に乗って飛ばされてしまえばいいのに。

今感じているざわざわした気持ちと一緒に。



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