その男性は私の目の前、つまりカウンター越しに立っていた。 商品を持っているわけでもなく、腕を組んでただ私を見ている。 「なにかご用ですか?」 今、店内にはこの人しかいないけど、こんな風にいられたら困る。 なにもないならさっさと帰ってもらわないと… 店長呼ぼうかな。 ちらりと奥を見た直後だった。 「七原栞奈、だろう?」 ―――え、 なに、コイツ… 私は声の方を向き、警戒の色を浮かべた。 .