もんもんと考え込んでいる最中にラディアンがいきなり謝ってきたので、ナーベルはぎくりとした。
そんなナーベルにはおかまいなしに、ラディアンは続ける。
「修行が全部終わっても僕のことが好きになれなかったら、家に帰っていいよ」
静かにそう告げるラディアン。
ナーベルははっとした。
皿洗いの後に水を止めたばかりの蛇口から水が一滴落ちて、ぽちゃん、という音が部屋に響いた。
静寂だけが、二人を包む。
「ラディアン」
消え入りそうな声で名前を呼んだナーベルに、ラディアンは顔を向けた。
ナーベルは躊躇いがちに、ラディアンの方を見た。
「ラディアンは………私のことが好きなの?」
これはずっと密かに疑問に思っていたことだった。
魔女の卵が自分以外にいなかったから仕方なく、なんてことはないのだろうか。
好きではないと言われたらどうしようと思いながらも、これを確認しなければナーベルはラディアンにきちんと気持ちを向けることはできないと思った。



