花の魔女



結局、その日は花が1センチ浮いたところで日が暮れて修行は中断された。

それでもナーベルは自分の力で花が浮いたことに喜び、ご機嫌だった。

ジェイクはすかさずそんなナーベルに茶々をいれた。


「二人してイチャイチャして。俺は居場所がなくて困っていたんだぞ」


夕食後の後片付けをしていたナーベルはジェイクの読み通り、顔をさっと赤くした。


「そんなことしてないわ」

「照れるなよ。これじゃあ、二人が結婚する日もそう遠くないね」


ナーベルはこの場にラディアンがいなくてよかったと思いながら、ジェイクを睨んだ。


ラディアンは夕食が終わると自分の部屋に籠ってしまった。

ジェイクにその理由を聞くと、父親に近況報告をしているのだと教えられた。


ナーベルは不思議に思った。

母親は反対しているのだから、父親も反対しているのではないのかと。


「反対してるのは母親だけ。父親はラディアンに協力して、ラディアンの母親に見つけられないように助けてくれてるらしい」


夫と息子がこそこそやらなきゃいけないほど母親は頑固らしい、とジェイクが呟くのを聞いて、ナーベルは先日会ったアナベラを思い出し、なるほどと思った。


「でも、一人前になって、お母様にばれたらどうするの?お怒りになるんじゃない?」