いきなり腕にナーベルの全体重がかかり、ラディアンは焦ってナーベルの頬をぺちぺちと叩いた。
「ナーベル!」
サイラスは二人を振り返り、舌打ちをした。
「しまった…!」
ナーベルの体から白い靄のようなものが溢れ出し、少年のもとへと集まっていく。
サイラスは剣を抜き、ナーベルから靄をひきずりだすのに気を取られていた少年に切りかかった。
少年は驚きに目を見開き、かわすことも防ぐこともできず、まともに攻撃を受け、そのまま地面の裂け目に落ちて行った。
集まる場所を失った靄は、白い球になって輝きながら宙をさまよっている。
それをサイラスはかき集め、気を失ったナーベルを抱きかかえている息子のもとへ駆け寄った。
「父様、ナーベルは…」
「心配するな。必ず助ける」
ラディアンの腕の中からナーベルを抱え上げ、近くにあった大きな木の洞の中へと運んだ。
マントを敷き、その上にナーベルを寝かせると、かき集めた白い球をナーベルの胸にあてた。
白い球はナーベルの体の中へ沈みこみ、何度かそれを繰り返すうちにだんだんナーベルの顔を血の気が戻ってきた。
ラディアンはそれを見て、不思議そうに球を手にとった。
「父様、これは一体何?」



