花の魔女



「本当に知らないの?クラウディオの娘だよ」


「なんだって…」


サイラスは心底驚いたようで、背後に匿っている少女を振り返り、息子にしがみついているあどけない少女をまじまじと見つめた。

ナーベルはサイラスを目があうと、萎縮したように体を縮こまらせてしまった。

少年はサイラスの知らない情報を与えたことで、得意げな様子だ。


「あのクラウディオの血をひく娘…受け継ぐ力も侮れない。幼いうちに殺してあげるべきだろ」


「馬鹿なことを!」


サイラスは少年に向き直り、さっと手を広げた。


その途端、大きな地鳴りとともに地面が揺れ、ナーベルは悲鳴をあげてラディアンと一緒に座り込んだ。


「去れ!この子に手出しすることは許さん!」


サイラスが広げていた手を勢いよくあわせると、地面に次々と罅が入り、地割れが起こり始めた。


男たちはあわてふためき、逃げ惑った。


「く…」


少年はふらつきながら、サイラスを睨み、それからナーベルを見た。


ナーベルが少年と目をあわせた瞬間、ナーベルは突然気を失った。