花の魔女



一生懸命走っても、大人の足にはとうてい勝てない。


とうとう二人は、大きな大木の下で男たちに追い詰められてしまった。

ぐるりと回りを囲まれて、ナーベルは恐怖に震えた。


そんなナーベルを守るように、ラディアンが抱き寄せてくれた。


「あれ、どこかで見たことがある奴がいると思ったら、ベルネット家の子どもか?」


15、6歳くらいの銀髪の少年が男たちの影から出てきて、ラディアンを見て面白そうに笑った。


「何してるんだ、こんなところで?騎士ごっこのつもりかい」


彼は二人のすぐ前まで来て、視線をあわせるように腰をかがめた。


「その子を渡してくれないかな。わけあって、殺さないといけなくてね…」


ちらりと、少年がナーベルの方を見て、ナーベルは背筋が凍りついた。



(この人は、わたしを殺すの…?)



きゅっとラディアンの服の袖を握ると、ラディアンはさらに強く抱きしめた。

その様子を見て、少年はため息をついて首を横に振った。


「どうしてこんなところにサイラスの子がいるかは謎だけど、殺すと父上に叱られる…」


そしてにっと笑った。


「だけど、少々傷つけるくらい許してくれるかな」


薄い笑みを浮かべたまま、彼は腰の剣を引き抜き、目を見開く二人に向かって、躊躇なく振り下ろした。