「わからないのも無理はない。君の記憶は塗り替えられているんだから」
塗り替えられている…?
「君がラディアンに心惹かれたのは、君が覚えていない過去も影響してると思うよ?」
そう言いながら、シルヴァンは球体をナーベルの額に押しつけてきて、ナーベルは髪が引っ張られて痛いのも構わず抵抗した。
これを受けとってしまったら、何かが変わってしまうのではないかという恐怖がナーベルを襲った。
そんなナーベルを、シルヴァンは心底愉快そうに見下ろしている。
「彼のことで頭をいっぱいにしてくれたら、俺も楽しいし」
やはり男である彼の力には敵わず、満面の笑顔のシルヴァンに、そのまま押し込まれた。
ナーベルの視界は光で埋めつくされ、何が何だかわけがわからなくなった。
白い靄のようなものだけが、ナーベルの頭の中を侵食していく。
力が抜けてぼんやりしてきたところで、その靄の中に何かが浮かびあがってきた。



