「嫌がってくれればくれるほどそそられるよ。君の苦痛に歪む顔が見られるかと思うとゾクゾクする…」
髪を縫いとめられて動けないナーベルの耳に、キスを落としてきた。
「う…」
嫌悪感にぎゅっと目を瞑ると、くすくす笑いが耳元で響いた。
「もっと…、君の悲愴な顔が見てみたいな。…そうだ」
シルヴァンは楽しいことを思いついた子どものように目を輝かせた。
「君に返さないといけないものがあるんだった」
シルヴァンは体を起こし、パチンと指を鳴らした。
するとどこからともなく、ふっと柔らかな光を纏った球体のものが現れ、シルヴァンの手の中に収まった。
「10年前、君から奪った“記憶”だよ」
「記憶…?」
ナーベルは妖しく光る謎の球体に魅入った。
記憶だなんて、シルヴァンは何を言っているのだろうか。
記憶をなくしたことなんか一度もないはずなのに。
「不思議そうな顔してるねぇ」
シルヴァンは輝く球体を、ナーベルの目の前に近づけた。



