パシッと手を掴まれた、
と思ったら、部屋の中に投げ戻され、ナーベルは絨毯の上に転がった。
痛みに顔を歪めていると、呆れた声が降ってきた。
「あんなところから逃げようとするなんて、死にたいのか?」
シルヴァンだ。
いつの間にこの部屋に来たのだろうか。
彼は倒れたままのナーベルに跨り、手で髪を抑えつけてきた。
「痛…!」
「何度も逃げようとしたらしいじゃないか。困ったお姫様だな」
囁いてくるシルヴァンをキッと睨みつけた。
「殺すなんて言ってる相手と結婚するなんて死んでも嫌よ!」
それを思えば逃げ出すための危険なんて怖いものではない。
ナーベルの言葉にシルヴァンは怒るかと思いきや、彼はおかしそうに目を細めた。
「いいねぇ」
そう言って笑ったシルヴァンに、ナーベルはゾッとした。



