花の魔女



「いけね、全部いただくとこだった。こういうのは最後の晩餐にとっとかないと」


あっさりナーベルにかけた魔法をといて解放すると、またな、と手をひらひらさせて部屋を出ていった。


シルヴァンが出て行くと、ナーベルはぺたりと床に座り込み、震えが止まらない体に腕をまわした。


(私を花嫁に所望?どういうこと…?)


一人前になるために魔女見習いのナーベルと結婚しようとするのはわかるが、魔女見習いなら手近にドロシーがいたではないか。


なぜわざわざ攫おうとしてまで、ナーベルを花嫁にするのだろうか。

しかも、殺すのだという。

ますますわけがわからない。


そして無理矢理唇を奪われた。


「ラディアン…」


せっかく会えたというのにまた離れ離れになってしまった愛しい人を思い浮かべ、薄暗い部屋の中で涙を流した。