花の魔女



少女はじっとナーベルを見ている。

その瞳はまるで小鹿のように、綺麗に澄んでいた。


驚きに声を失くすナーベルの耳に、クックック、と低い笑い声が聞こえてきた。


咄嗟に振り返ると、部屋の入口に一人の男が立っていた。


黒い髭を生やした男は、見たところサイラスと同じくらいの年だろう。

どこかドロシーと似た面差しの男は、ナーベルと目があうとにたりと笑った。


レジスだと、すぐにわかった。


「まさかお前のほうからわざわざこちらに来てくれるとは…攫う手間が省けたというもの」


「さ、攫う…?」


いただけない言葉にナーベルが後ずさると、レジスは一歩前に進み出た。


「あるお方が、お前をご所望でね…。さっきも鷹を使いにやったのだが、可哀相に、死んでしまったようだね」