花の魔女




「え…」



背中には地面の硬さを感じ、ナーベルの目に、輝く金色の髪と、掠めていく鷹の姿が映った。


結界は粉々に砕け散り、大粒の雨が降り注いできた。


「ナーベル…」


ラディアンが口を開いた。


「怪我はない?」


ナーベルは言葉を出すこともできずに、優しい視線を落としてくる目の前の青年をただただみつめた。



「ラディアン…?」


震える手でラディアンに手を伸ばすと、彼の頬に触れることができた。



ラディアンは拒絶することも消えることもなくて



――呪いは、解けていた。



「ごめん」


小さな声で、申し訳なさそうに謝罪するラディアンに首を横に振った。


青い瞳に確かに映っている自分の姿に、きゅっと胸の前で手を握りしめた。


「とりあえず、あの鷹をどうにか…」


そう言って体を起こそうとしたラディアンが小さく呻いた。