花の魔女



「私が、彼を止めます」


「止めるって…!?」


焦るドロシーを背に、ナーベルは剣先をこちらに構えて立つラディアンと向き合った。


ルッツはドロシーの肩を抱いたまま、黙って二人を見守っている。

ラディアンは対峙しようとしてきたのがドロシーの側にいる男のルッツではなく、少女のほうだったことに戸惑っているようだった。


青い瞳が揺らいでいる。


「どいてくれ」


剣を握りしめたまま、ラディアンはナーベルに退くように促した。


ラディアンの声に少し胸が苦しくなったが、首を横に振ってその場を頑として動かなかった。


「私が退いたら、ルッツを傷つけるでしょ。そんなことさせたくないの」


呪いのせいで何もわからないうちに人を傷つけたなんて知ったら、ラディアンは傷ついてしまうだろうから。


だから、と言ってナーベルは右手の指を二本立て、天に向けて振り上げた。