花の魔女


「わざわざカーテンを閉めて隠そうとしていたのに、隙間があったとは迂闊でした」


「ちがうでしょ?私を試してたんだわ、気づくか気づかないか」


ルッツは意味ありげに微笑み、またカーテンを閉めた。

そして珍しくぼんやりとしてカーテンを見つめているかと思えば、ふっと口を開いた。


「ラディアン様を連れて現れたあの女性、…ドロシー様は、私の恋人でした」


突然ルッツがそんなことを話し始めたので、ナーベルはえっ、と目を見開いた。



(あの女の人と、ルッツが……?)



3日前、ラディアンとともに現れた自分と同じ黒い髪の、美しい女性を思い浮かべた。

あの女性とルッツが、そうだったなんて!


「ドロシー様はレジス様の娘です。私たちの関係に気づいたレジス様は私を国外に追放し、私たちは引き離されてしまいました」


ルッツはナーベルのほうに顔を向け、眉を下げてふっと笑った。


「それからです、ドロシー様のご様子が変わられたのは。昔はあのような鋭い目つきをしたお方ではなかったのですよ」