止めていた手を動かし、花を生けるのを再開してルッツが静かに尋ねた。
ナーベルはもう一度カーテンの隙間から見える小さな夜空に目を向け、そこに浮かぶ月を見た。
「今夜の月の輝きは、霞んでいて元気がないわ。いつものあなたなら、もっと美しく輝かせているはずなのに」
そう言ってからいたずらっぽくルッツを振り返ると、ルッツは目をまるくしてナーベルを見つめていた。
しばらくそうしてから、はぁ、と息を吐く。
「さすがはナーベル様。やはり気づいておられたのですね」
「私のまわりには精霊が2人もついているのよ。あなたが月の精だとてことぐらいわかるわ。といっても、気づいたのはついこの間なんだけどね」
「十分ですよ」
ルッツは微笑んで、窓のところへ行くと閉めていたカーテンをサッと開けた。
美しい星空が窓いっぱいに広がる。
そこに浮かぶのは、ぼんやりと光を放つ霞んだ月。



