大きく叫んだ自分の声に、ナーベルははっと目を覚ました。


カチ…カチ…と、時計の針が動く音が部屋に響いている。


「………」


ナーベルはゆっくりとベッドから体を起こし、額に手を当てた。


(夢…ね……)


はぁ、とため息をつき、顔をあげたところでぎょっとした。


この部屋には自分以外誰もいないと思っていたのに、ドアの近くにいつものようにルッツが立っていたのだ。


「な…、ルッツ!全然気づかなかったわ。気配がなかったわよ、今」


おろおろしながら言うと、ルッツはにこりと目を細めた。


「静かにしているのは、私の得意分野ですので」


「そ、うね」


ただ静かにしているというレベルではなかったように思うが、ナーベルは曖昧に頷いた。

その間にルッツは肩掛けを取り出し、ナーベルの肩にかけてくれた。


「ありがとう」


ナーベルがお礼を言うと彼は微笑んだが、すぐに真面目な表情になった。