花の魔女


「ほほほほ、まだまだですわね。この程度の魔物にも太刀打ちできないようじゃ、一人前の魔女になんてなれませんわよ」


高飛車な声が頭上から降ってきて、ナーベルは声の主を探して顔を上げた。


「!!」


そして人影を見つけた。


魔物の上に立っている、黒いドレス、漆黒の髪をたなびかせる女。



その、隣には――



「……ラ…ディアン」


ナーベルは目を見張った。


そこにいるのは確かにラディアン。

その立ち居振る舞いも、青の瞳も、間違うはずがない、ラディアンのものだった。



――やっと、会えた。



「ラディアン……」


嬉しさと、無事だったことへの安堵に名を呟いた。

しかし、どこか様子がおかしい。


彼の青の瞳は、何の感情もなくただ無表情にナーベルを見下ろしている。



ナーベルはゾクリと震え、隣にいる女に叫んだ。


「あ…なた、一体ラディアンに何をしたのよ。ラディアンを返してちょうだい!」


女は肩にかかった黒髪をサラリと後ろに払い、ふふんとナーベルを見下ろした。