花の魔女


なるほど、とナーベルは頷いた。


「それは嬉しいわ。もうくたくたなの。早く休みたいと思ってたのよ。明日も修行があるもの」


「それはよろしいことで」


ルッツが微笑み、ナーベルも笑みを返した。


ルッツの、いつも穏やかな微笑みは張りつめた緊張を解きほぐしてくれる。

何だかこちらまで穏やかな気分になれるような気がするのだ。

優しく、柔らかく包み込んでくれる。


そう、ちょうど彼の背後から差すやわらかな月の光みたいに―――…



はっ、とナーベルは目を見開いた。


月の光………


そういえば


「ねぇ、ルッツ……」


「ナーベル様っ!」


バーン、と扉を開いて、モニカが元気よく部屋の中に飛び込んできた。


慌てて、ナーベルは自分の口を自分で塞いだ。


「ナーベル様、お湯の用意ができました!さぁさぁ、浴室に参りましょう!」


目に見えてウキウキと楽しそうなモニカに手を引かれて、ナーベルは腰掛けていたベッドから立ち上がった。


何がそんなに楽しいのかはわからないが、にこにことしている彼女は可愛らしい。

妹がいたらこんな感じなのかしらね、とナーベルはモニカにつられて笑った。