今まで誰に淹れてもらった紅茶よりもおいしい。
この人には欠点というものがないのかしら、とナーベルは思った。
「奥様が夕刻、こちらに戻ってこられましたよ。旦那様はまだ現場にいらっしゃるようですが。奥様はナーベル様がやる気になってくれて心強いと、大変喜んでおられましたよ」
「まあ」
期待されておられますね、とにこやかに言うルッツが恨めしい。
彼はきっと、ナーベルに意地悪でそう言ったに違いない。
(だって、その笑顔がそう言っているもの)
「それにしても」
ナーベルはティーカップをテーブルの上に置いた。
「モニカはどこに行ってしまったの?さっきから姿が見えないわ」
きょろきょろと部屋を見回してみたが、いつもモニカが立っている場所はからっぽで、だからと言ってこの部屋のどこかにいるわけでもない。
ナーベルが首を傾げていると、ルッツがティーカップを引き取った。
「彼女なら、先ほど浴室へ走っていきましたよ。お湯の用意でもしているのでしょう」



