花の魔女


ぼんやりとしてきた頭でナーベルは気づいた。


男であるルッツが自分につけられたのは、そういうわけだったのだと。

アナベラも魔物がナーベルを狙っていると気づいていたのだ。



ナーベルの体から力が抜けたのを確認すると、ルッツはそっと腕を離した。


それでも至近距離にあるルッツの瞳を、ナーベルはじっと見つめた。


ルッツの瞳は驚くほどきれいだった。


淡い月の光を纏っているみたいに金色に輝いて――‥



そう、まるで夜空に浮かぶ月みたいに。


今まさに窓の外に輝く月をルッツの肩越しに見つめた。


そして今にも眠ってしまいそうな目でぼんやりとこぼした。


「今夜の月は、とてもきれいだわ……」


ナーベルの呟きに、ルッツが柔らかく微笑んだ。


「ありがとうございます」


どうしてルッツがお礼を言うのだろう……


ナーベルは不思議に思ったが、そのままコトリと夢の世界へ入ってしまい、尋ねることはできなかった。