それでこの国には魔物が現れることがなかったのだ。
自分たちが平和に暮らせていたのは魔法使いたちが魔物を遠ざけてくれていたからだと知って、ナーベルはごくりと息を飲んだ。
「しかし、サイラス様がいらっしゃるにも関わらず魔物が出没するようになりました。サイラス様の力が弱まったわけではありません。私は思うのです、あれは何かに操られていると」
ルッツはそこで言葉を止めて、身を固めて聞いているナーベルに視線を合わせた。
ナーベルがルッツと目を合わせ、少し首を傾げるとルッツは薄く微笑む。
「まるで何かを―――探しているみたいにね」
ドクン―――
ナーベルの心臓は一度、強く鳴った。
ルッツの顔を凝視したまま、胸元を抑えた。
(そんな……まさか――?)



