花の魔女


「それにしても、魔物だなんて」


ナーベルはベッドにボスッと腰を下ろした。


何だかどっと疲れが出てきたようだ。

早くこのきついドレスを脱いでしまいたい。


しかし、脱ぐのを手伝ってもらうはずのモニカは食堂の片付けに行っていてここにはいない。


さすがにルッツに手伝ってもらうわけにはいかないので、仕方なくこのままでいることにした。


「噂には聞いたことはあったけれど、もっと遠くの国のお話かと思っていたわ。私の村では、魔物なんて現れたことなかったもの」


ナーベルは少し離れた場所に立っているルッツ相手にそう言った。

ルッツはナーベルの言葉を受けて静かに首を横に振った。


「あれが出没し始めたのは、ここ最近のことなのです」


「え……、そうなの?」


「はい。この国にはサイラス様とアナベラ様がいらっしゃいます。アナベラ様は今はあまり魔力が残っておられませんが、お二人の力は強大でした。魔物も近寄ることすらできないほどに」