ナーベルはアナベラとサイラスの様子を見て、どうやらこの家ではアナベラが一番の権力者なんだわ、と思った。
それからすぐに召使いがやって来て、馬車に積んでいたナーベルたちの荷物を次々と運んでいき、そのうちの一人がナーベルに
「お部屋にご案内させていただきます」
と頭を下げた。
慣れない状況にナーベルが戸惑っていると、アナベラがナーベルの肩にそっと手を置いた。
「長旅で疲れましたでしょう?今日はゆっくりお休みになってね。ルッツ、お湯の用意もお願いね」
「かしこまりました、奥様」
ルッツと呼ばれた男の使用人が頭を下げると、それではごゆっくり、とアナベラとサイラスは別の場所へ行ってしまった。
職業柄、色々と忙しいのだろう。



