館に着くと、サイラスが待ちわびていたようにナーベルたちを出迎えた。
サイラスはアナベラと違って魔法使いらしく黒い衣装に身を包んでいて、銀のバッジのような飾りを胸のあたりにつけている。
口元に少し生やした赤毛の髭が可愛らしい。
「やあやあナーベルさん。待っていたよ、久しぶりだね!それにしても、こんなに美人さんになっているとは思わなかった!」
初めまして、と挨拶しようとしたところでそう言われて、ナーベルは下げかけた頭を起こしてきょとんとした。
ラディアンの父であるサイラスとはまだ会ったことがなかったはずだ。
アナベラはナーベルの横を通り越し、無表情につかつかとサイラスに歩み寄るとサイラスの足をヒールで踏んづけた。
痛がるサイラスを無視して、アナベラはナーベルにほほほと笑いかける。
「ごめんなさいね、気になさらないで。こちらは私の夫のサイラス・ベルネットよ。妄想癖があるの」
「は、はあ……」



