「ねぇ、先輩。まだ引きずってるの?
俺じゃだめ?
先輩のこと、俺、ずっとずっと好きなんだよ?」

そう言って強引に押し倒してキスをしてきたのは、
サッカー部の後輩。

入学して、サッカー部に入ってきた時からずっと、好きだ好きだと言われ続け、
はいはい、と流してはいたものの、
何かと絡んでくるから結局仲良くなっていて、家に遊びに行くこともよくあった。

「ここ…私の元カレが去年まで住んでた部屋なんだよね…」

「はっ?何それ。どういうこと?」

「元カレは去年卒業した先輩だから。」

「えっ。だから、なに?」

「だから、この部屋で、そういうことする気になれない。」

「意味わかんねぇ。
じゃー、なんで俺んち来たの?」

「風邪ひいて動けないから来てくれって死にそうな声で電話かけてきたから。
マネージャーだし。」


「今までだって何度もうちに来てたじゃん。」

「何かと用事を作って呼んだのはタカヒロでしょ?
私は一度たりとも女として来た覚えはないよ。
もちろん、タカヒロのことを男として見たことも。
大事な後輩だよ。
じゃー、おじや作っといたから、暖かくして寝てなね。私帰るよ。」

「待って…俺…先輩のこと本気で好きなんだよ…」

「キャッ…」

「なぁ、忘れられないタカって人と重ねていいから。
俺のことタカって呼んでいいから。
きっと重ねているうちに、気持ち変わっていくよ…
だから…」


「やめて!!同じタカって名前がついても、あんたはタカヒロでしょ!!
タカヒロはカッコイイしモテてるじゃない。
なんで私なんかにこだわるの…
もっといい女たくさんいるでしょ!
それに、私は重ねることなんてできない…
だから……やめて……
…………お願い………」


後輩と言えど、男の力には敵わない。

強引に押し倒されて、両手を抑えつけられた。


目をギュッと閉じた瞬間、忘れられないタカのことを思い出した…



「先輩…泣いてるの?」


ハッとした。

涙がボロボロこぼれていた。