もう1人の彼氏

この春から社会人になった私は、毎日のように会社帰りに、タカマサのうちへ行った。


近所ではなくなったけど、かえって、このほうが会いやすかった。




「ねぇ、絵里香、なんの勉強してんの?」


「資格とらなきゃいけないの。仕事に必要なの。あーっもうわかんない!」


「ねぇねぇ、メシ食わねぇ?」


「あ…もう夜かぁ……どこか食べに行こっかぁ……」

「たまには何か作ってよ。」


「えっ。私、料理できないよ(笑)」


「じゃーパスタ!かーちゃんが大量に送ってきたのがたくさんあるんだよ。」


「私できるかな…」


「茹でて混ぜるだけじゃん………」


その単純なことさえできなくて………

「キャーッ…どうしたらいいの?これ………」


「………もう……」


半分飽きれて、半分笑った顔のタカマサを初めて見て恥ずかしかった。


「絵里香、家で料理とかしないの?」


「うん、しない。幻滅した?」


「いや、可愛いなと思って(笑)」


「え?子供みたいっていう、けなし?」


「ちがう、絵里香でもできないことあるんだなって(笑)」


「私、できないことだらけじゃん(笑)」


「そう?だって、研究も、すっげーのやってたじゃん。俺、分野一緒だし似たような研究しようとしてるんだけど、かなり難しいし。今だって一流企業就職してるし。」


「研究は…ほとんど手伝ってもらってたから……」


「誰に?」


「か…れし……だった人。」


「え?別れたの?」


「うん…」


「なんで?俺のことが原因?」


「ううん、違うよ。」


「じゃあなんで?」


「好きじゃなくなったから。」


「………俺のことは?」


「好き。だから、今、こうしてるの。」


「でも…さ…俺……別れてないよ……?」