カランと音をたてるドアベルの音が、

なんだか随分久しぶりな気がした。


扉を開けば香ってくる、

珈琲の香り。


冷たい風から逃げるように、
店内に入る。


パチンと点けられた照明に
目を細めた。


「夕飯にするか。」


ストーブを点けていたマスターが言った。


「何か、作る?」


私の問いに、マスターは頬を緩めて


「ナポリタンがいい。」


と言った。


この人は、喫茶店の定番メニューが好きだ。


というか、お子様ランチの中に入ってるような物が好きらしい。


ハンバーグとか、
海老フライとか。


私は、コートを脱いでカウンターの中に入った。


並んで作る夕飯に、

何だか少し照れる。


「新婚さんみたいだなぁ。」


マスターの一言に

「そういう恥ずかしい事を平気で言うよね。」

と、言ったら
マスターは笑って

私の髪をくしゃりと撫でた。