その喫茶店は国道を脇道に入った所にある。 奥まった、 袋小路の手前にひっそりとあるから、 常連客以外はめったに来ない。 「奈津、真船さんに水とおしぼり。」 店の入口の飾り気の無い扉を開くと、 マスターが目だけ上げてそう言った。 どうやら、 他の客の為に珈琲を淹れているところらしい。 私は言われるがまま、 奥のテーブル席に座る常連客に水とおしぼりを出した。