がちゃ ゆっくり扉を開けると リビングから笑い声と共に夕飯の良い匂いがした。 きっと今夜はシチューだな。 「ただいま〜」 靴を脱ぎながら、ちょっと大きめの声で言うと、 「おかえりなさーい」 お母さんの声だ。 そして手をエプロンで拭きながらリビングから顔を出した。 「今日は、遅かったわね〜」 「うん。ちょっと…。」 「どうしたの?」 「……電車逃しちゃって。」 「あ、そう。」 まあ、本当でもないけど。嘘でもないか…。