君に愛の唄を


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「おもしろかった?……心菜?」


「え?…あぁ、うん!泣けたね」



不意に現実に戻る。


…ごめん、蓮。

本当は映画の内容なんて覚えてない。


いけない。いけない。

今はデート中なんだから!


「本当に泣けた?」


「うん…」


「…ふーん、そう」



蓮はなんか納得いかないような顔をしたと思ったら急に笑顔になった。


私はそれにホッとした。


最後のデートなのに…

ずっと笑顔でいようと思ってたのに…

今日は楽しもうと思ってたのに…


……全然ダメだ。


どうしよう。これでお別れなんかしたら私は絶対に後悔する。


だけど、心がついて行かない。


どこかに取り残されたような、そんな複雑な気分になる。


今、繋がってる蓮の手が遠くに行っちゃう。


そう思うと気が気じゃない。