君に愛の唄を


私は部屋のベッドに力なくうつ伏せで寝ていた時、考えていた。


…いや、考えようとしていた。


でも、頭は何も考えてはくれなくて。


何も考えられなかった。


頭がボーッとしていて、それはまるで現実から目を背けているようだった。


いわゆる現実逃避。


せめて、相談してほしかったなぁ…


『俺、旅に出ろう思う』

じゃなくて

『俺、旅に出る』

だもんね。



──ブーッブーッ…



その時、マナーモードの携帯がバイブでメールの受信を知らせた。


蓮からだ…



【今日は驚かせてごめん。

 クリスマスに
 出発することが決まった。】



「一人で勝手に決めないでよぉ…」



ポタ…ポタ…と次々に涙が大粒の雨のように溢れて流れる。


ギュッとベッドのシーツを握り締め、果てない悲しみをこらえていた。




私のちっぽけな願い。


──行かないで…