君に愛の唄を



《回想~紗英~》


私は突然走って行ってしまった心菜を待っていた。


取りに行って来るって…


まぁ、どうせ心菜のことだからチケットかなにかを忘れたんだろうけど……


そんな時、肩をトントンと叩かれた。


誰…?


後ろを振り向くとニコニコしたスーツの男の人が立っていた。



「あの、紗英さんですよね?」


「え?……はい」



何で私の名前知ってんの?


しかも何?

このニコニコ笑顔は……


なーんか怪しい。



「それじゃ、行きましょう」



そう手を捕まれると強引に引っ張られた。


えっ?

ちょっと何すんのよ!?



「いやっ、離してよ!友達待ってんの!」


「心菜さんなら後で連れて来ますから」



心菜の名前まで何で知ってるの?


この人何者なわけ?